昭和の木造賃貸アパート2 in 1
昭和40年代に建てられた2階建ての木造賃貸アパート、いわゆる木賃アパートの20年以上空室だった部屋を取り込んだ2in1リフォーム。内装の解体を必要最小限にして最小の手数で最大の効果を得るため、2in1の特性を活かし今まで無かったプライベートの境界線をシンプルに2部屋で引き分け、この2部屋を多目的に使える大きな玄関・廊下でブリッジさせることにしました。そして視覚的にもオンオフの切り替えができるよう、2部屋にそれぞれ異なったキャラクターを持たせることにしました。この明快なON/OFFのゾーニングに加え、設計から施工までのBIM活用、IKEAキッチンのカスタマイズ、音声コマンド対応のスマートデバイス採用などが評価され、第38回住まいのリフォームコンクールにおいて賃貸ストック活用特別賞を受賞しました。
神楽坂パークハウス
神楽坂に建てられた共同住宅のためのデザイン監修。神楽坂というオリジナルのキャラクターに満ちたセッティングのため、難しいことを考えずに、神楽坂の雰囲気を素直に受け入れ、現代の住環境にマッチさせることを目指しました。具体的には土、漆喰、石、瓦、木などから、色、テクスチュア、形など神楽坂にちなんだ要素を仕上げ材として採用。一部のユニットには洗い出し仕上げのPCタイルを敷いた土間を組み込み、通常はLDKの延長でしかない和室を、バスルームやクロゼットと裏動線でダイレクトにつながる、隠れ家のような自立した空間へと変換できるようにしました。
虎ノ門の日本料理教室
虎ノ門の賃貸ビル地下に計画された日本料理研究家のための教室兼茶室。限られた空間のなかで多目的に利用されるキッチンと8人が同時に試食できる掘座卓付き和室を、水屋と京間モジュールの茶室としても成立させることがクライアントの希望でした。ただし茶室設計の要である茶道口の位置は、キッチンのダクト・配管ルートの関係上自由度がなく、四畳半の基本形は本勝手では物理的に成立できず、また1と1/4畳分が必要な8人用掘座卓と炉はスペースの共有が難しいうえに、上座床では客人の動線が確保できないなど、がんじがらめの与条件のなかで計画はスタートしました。そこで茶室を平面上45度回転させ、この回転によってできた4つの余白空間に、それぞれ点前畳、路地、床、動線を割り当て、点前畳は台目畳として炉は台目切り、にじり口と貴人口は並立させ床は下座床とすることでこの問題に対応しました。平面的には五畳半台目切に近い広間に小間を組み込んだような茶室になりました。露地に従前の内装を解体撤去したままの姿を残したのは、荒々しい表現をしたかったからではありません。どこまでも仕上げられた虎ノ門のまちのなかにあって、仕上げられていない、スーツを着たままでは近寄りがたいほど素の状態をさらけ出した場に遭遇すること、それ自体が極めて稀で非日常的な体験であると思ったからです。
Photo:Kimikazu Tomizawa
キッチン
フルオーダーからIKEA製品のカスタマイズまで幅広く対応します。